未払いの残業代(時間外手当)を請求するためのポイントを弁護士が解説

労働関係で問題となるケースが多い事例として、残業代の未払いという問題があります。

ケースによっては、労働者が、本来受け取れるはずの残業代を、数百万円単位で受け取ることができなくなっているというケースもあります。

そこで、本記事では、未払いの残業代を請求できるのではないかという疑問をお持ちの労働者の方を対象に、未払いの残業代を請求するためのポイントを解説します。

どのような時間が労働時間に該当するか

会社の中には、労働法上、本来残業代を支払う必要性がある時間であるにもかかわらず、残業代を支払っていないというケースが見られます。

会社としては、残業代を支払うべき労働時間に該当しないと考えているものの、法律上は残業代を支払うべき労働時間に該当するというケースも多いです。

そのような場合には、会社が残業代を支払わないことは法律上違法となりますので、労働者は会社に対して残業代を請求することができます。

そもそも、労働法上、労働時間とは、使用者の指揮監督下に置かれている状況のことをいいます。

そのため、実際に労働を提供しているわけではない時間についても、労働者が自由に行動できないような場合であれば、労働法上、労働時間に該当し、使用者は、その時間について賃金を支払う必要があります。

例えば、始業が9時からである場合に、会社が、8時半に出社をして、9時から始業出来るようにあらかじめ準備をしておいてくださいというような指示を出しているときには、会社には、8時半から賃金を支払う義務が発生するものと考えられます。

また、警備会社や管理会社で問題になることがありますが、仮眠時間についても、労働時間に該当するものと判断され、会社に賃金を支払う義務が発生するケースもあります。

したがって、会社が、賃金を払わなくても良いと判断している時間でも、労働法上、労働時間に該当し、本来は賃金を支払わなければならないというようなケースが存在します。

労働法上規定されている割増賃金について

労働法上、残業代(時間外手当)以外についても、様々な割増賃金が規定されています。

(※)2023年4月1日からは、中小企業も50%以上になります。

なお、休日労働については、8時間を超えて働いても、8時間を超えた労働時間は、時間外労働になりません。また、休日労働の8時間を超えて働いた労働時間は、月60時間規制との関係においては、カウントされないという考え方が、行政の考え方になります。

残業代の請求方法

以下では、残業代の請求方法を具体的に説明をします。

証拠の確保の重要性

残業代を請求するためには、いくら未払いの残業代があるかを算定する必要があります。

そのためには、残業時間がどの程度あるかということが、証拠上判断できる必要があります。

例えば、働いた時間を判断するための資料としては、タイムカードが考えられます。

また、パソコンのソフトを用いて働いた時間を管理しているようなケースでは、パソコンを立ち上げた時間及びパソコンの電源を切った時間を記録しておくことが考えられます。

さらに、通勤の際に、公共交通機関を利用しているようなケースでは、ICカードの利用履歴を記録しておくと言うことも考えられます。

ほかに、通勤の際に車を利用しているようなケースでは、カーナビが起動した時間などが証拠となるようなケースもあります。

その他、所定賃金を判断するための証拠(労働条件通知書等)や就業規則等も証拠として重要になります。

残業代を請求するための方法

残業代を請求するための方法としては、以下の方法が考えられます。

①会社と交渉を行う方法
②労働審判を行う方法
③訴訟を行う方法

①会社と交渉を行う方法

まず、会社と交渉を行うことが考えられます。

会社に対しては、内容証明郵便等で残業代を支払ってもらいたい旨を連絡すると言う方法が考えられます。

また、会社に対し、未払いの残業代について、請求書を送付するという方法も考えられます。

ただ、会社としては、残業代を払わなくて良いと判断し残業代を払っていないというケースが多いため、会社が交渉に応じない場合も多くあります。

②労働審判を行う方法

次に、労働審判を行うという方法が考えられます。

労働審判とは、残業代の不払いを含め、解雇や賃金の過払い等に対して、会社と使用者のトラブルを個々の事情に即して解決するための手続きです。

労働審判の特徴としては、訴訟に比べて、迅速に手続きが進むという特徴があります。

労働審判では、原則として3回以内の期日で労働審判を終えることになります。

そのため、当事者としては、各期日において、しっかりとした主張を行う必要があります。

なお、労働審判については、まずは調停と言う形で話し合いによる解決を目指します。

その後、話し合いがうまくまとまらない場合には、当事者の主張や提出された証拠を踏まえて、労働審判と言う形で一定の解決案が示されることになります。

ただ、労働審判という形で一定の解決案が示された場合でも、当事者が示された解決案で納得がいかない場合には、異議申し立てという手続きを行うことができます。

異議申し立てが行われた場合には、労働審判は効力を失い、訴訟手続に移行することになります。

③訴訟を行う場合

前述のように、労働審判が先行し、そこから当事者による異議申し立てによって訴訟手続に移行するということがあります。

また、労働審判を経ることなく、いきなり訴訟を行うということも考えられます。

前述のように労働審判は、原則として3回以内の期日によって審判が行われます。

そのため、事実関係が複雑な事件については、労働審判にはなじまないものと考えられます。

また、当事者の対立関係があまりに激しく、労働審判での解決が当初から難しいと思われるような事案については、労働審判を経ることなく、いきなり訴訟を行うということも考えられます。

残業代請求の消滅時効について

残業代請求の消滅時効については、2020年4月の民法改正の結果、当面の間、2年間から3年間に延長されました。

ただ、3年間と言う消滅時効が適用されるのは、2020年4月1日以降に発生する残業代請求についてのみですので、注意が必要です。

例えば、2020年3月1日に発生した残業代については、従来通り、消滅時効は2年間と言うことになります。

まとめ

以上、未払いの残業代を請求できるのではないかという疑問をお持ちの労働者の方を対象に、未払いの残業代を請求するためのポイントを解説しました。

残業代を請求する場合には、具体的な金額を算定する必要があります。

また、当事者間ではなかなか解決が難しいようなケースもあります。

そのため、未払いの残業代の請求を考えている労働者の方は、お気軽に永島法律事務所までご連絡をいただければと思います。

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