電車で他の乗客の足を踏んで怪我をさせてしまった場合に治療費を支払う必要があるか

ラッシュ時間帯の満員電車に乗っていると、電車が揺れた拍子に、体勢を崩してしまう事もあると思います。
その際、他の乗客の足を踏んでしまい、怪我をさせてしまったという経験がある人いるかと思います。
特に、女性でハイヒールを履いていると、一点に力がかかってしまい、他の乗客の足の指を骨折させてしまったというケースもあるかもしれません。
そこで、本記事では、電車で他の乗客の足を踏んで怪我をさせてしまった場合に治療費を支払う法的義務が発生するのかについて解説をします。

相手方に怪我をさせてしまった場合の法的責任

一般的に、相手方に怪我をさせてしまった場合、故意又は過失が認められるときには、不法行為(民法第709条)として、相手方が被った損害を賠償する法的義務が発生することになります。

足を踏んで相手方を怪我をさせてしまった場合

足を踏んで相手方に怪我をさせてしまった場合には、踏んだ人に故意又は過失が認められれば、不法行為として、治療費などの損害を賠償する法的な義務が発生することになります。

故意又は過失が認められるケースとは

電車で、他の乗客の足を踏んで怪我をさせてしまったことについて故意又は過失が認められるかということについては、実は、難しい問題があります。

足を踏まれた人が治療費などを足を踏んだ人に対して請求する場合には、足を踏まれた人が、足を踏んだ人の故意又は過失を立証する必要があります。

例えば、他の乗客と喧嘩になり、足を踏んだというような場合であれば、足を踏んだ人に故意は認められやすいと考えられます。

問題は、過失が認められるかどうかが争いになった場合です。
足を踏んだ人が、通勤や通学等で、ほぼ毎日電車に乗っており、乗ってる電車が揺れることをわかってたのに、スマホをいじっていて、吊り革や手すりに掴まっていなかったというケースや、椅子が空いてるのにも関わらず椅子に座らず、かつ、つり革や手すりなどにつかまっていなかったというケースでは、電車が揺れてふらつくことが予見できたにも関わらず、揺れてふらつくことを回避するための措置を講じていなかったということができると考えられます。
このようなケースでは、足を踏んだ人の過失が認定される可能性があります。
ただ、私は踏まれた人が、足を踏んだ人の過失を立証するのは現実的にはなかなか難しいケースもあります。
足を踏まれた人は、目撃者がいる場合には、目撃者に証言をしてもらうなど、協力をしてもらうことが望ましいといえます。
最近では、電車の車内への監視カメラの設置が進んでいますので、足を踏まれた人は、足を踏んだ人に同行を求め、駅員に事情を説明し、監視カメラの確認を求めるという対応を行うことも考えられます。

他方で、電車が何らかの事情で急ブレーキをし、電車が大きく揺れてしまったような場合には、電車の揺れでふらつくこともやむを得ないと考えられますのでこのような場合には、足を踏んだ人の故意又は過失が認められない可能性もあります。
その場合には、不法行為が成立するとはいえず、損害賠償を行う法的な義務が発生しないということも考えられます。

相手方に対し治療費を支払うと約束をしてしまった場合

足を踏んだ人に故意又は過失が認められない場合でも、足を踏んだ人が、足を踏まれた人に対し、足を踏んで怪我をさせたことを認め、治療費を支払うことを約束してしまうと、治療費を支払うことに関する契約が成立し、その契約に基づいて治療費を支払わなくてはならなくなってしまうということも考えられます。

そのため、他の乗客の足を踏んでしまった場合には、まずは近くにいる駅員に事情を説明するという対応を行うことが良いと考えられます。

足を踏んだ人に故意又は過失が認められない場合には足を踏まれた人は泣き寝入りしなければならないか

足を踏んだ人に故意又は過失が認められない場合、足を踏まれた人は、足を踏んだ人に対して損害賠償を請求することができません。

ただ、通勤中に足を踏まれたというケースであれば、通勤災害として、労災として認定され、労災の療養給付や休業給付を受けられる可能性があります。

また、労災として認定されない場合でも、健康保険に加入している場合には、傷病手当金を受け取れる可能性があります。

まとめ

以上、電車で他の乗客の足を踏んで怪我をさせてしまった場合に治療費を支払う法的義務が発生するのかについて解説をしました。
当事者間でトラブルとなってしまい、当事者間での解決が難しいような場合などには、当事務所までお気軽にご連絡いただければと思います。

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